モン姉ちゃん


 お姉ちゃんはマリワンという。普通は、ピー・モン(モン姉)だ。

 嫁はチェンマイに出て、パーマだの化粧だのドレスだの、それと日本語の勉強もしていたという。だけど、モン姉は根っからのお百姓で、村の生活しか知らない。

 私が初めてモン姉に会った頃、つまり私が最初にタイに渡った当時、タイ料理をいきなり食べられたわけではない。

 街へ出てパンを買ったら、日本と同じ味がした。それを持って帰って、大事に食べた。これがなくなったら、あとは食い物がなくて死ぬかと思った。この頃は醤油も買えなかった。

 一つの広い敷地に、親の家と嫁の家が建っている。モン姉が親の家から降りてきた。

 最初にパンを見て「これはなんだろう」という不思議そうな顔をしていた。後で見たらパンのヘリが少しなくなっていた。次の日、パンは1枚の半分が消えた。その次の日、パンは1斤全部消えていた。モン姉に食われたことは言うまでもない。私は街に出て食えるものを探した。ドーナッツで命をつないだ。

 息子が生まれた。私は、街一番の高価な病院で息子をこの世に迎えた。モン姉に世話になった。売店があった。グリコのチョコがあった。懐かしくて買った。モン姉にも一つ食べるように言った。またまた不思議そうな顔をした。その頃になると、私も家族の一員だった。勧めに従って、一つ口に入れたモン姉。結局、私はもう一箱、チョコを購入することになった。

 気の良いモン姉は、未婚で3人目の子供を産んだ。籍を入れると亭主の家が絶えるからだという。ノーンは、ジープンのパンラヤーになってしまった(*)。代りに、モン姉が跡を継ぐのかな。

 愛すべきモン姉ではある。

(*)  嫁は、ノーンと呼ばれている。末っ子、「妹よ」という意味。同時に相続人であり、親の面倒を見る。ノーンは日本人の妻になってしまった、ということ。

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