日・タイ婚姻法 日本人とタイ人の婚姻・入国手続、子に関する諸手続

第12章 在留特別許可

     不法滞在(超過滞在、不法入国等)の状態から、正規の在留資格を取得することを『在留特別許可』と呼んでいます。

前提条件

    婚姻

       知り合ったタイ人が不法滞在の場合、在留特別許可を得るためには、正規の婚姻をすることがほとんど絶対条件となっています。正規の婚姻が成立していなければ、ほぼ不可能だと思ってください。また、婚姻は、数年前は日本側だけで通っていたのですが、近年は日本側だけでは不足で、タイ側でも手続する必要がある、という指導になっています。

      (前略)

       そこで,我が国では,不法滞在者については,入管法に定める退去強制手続にのっとり,法務大臣が在留を特別に許可すべき事情があると認めた場合に個別にその在留を特別に許可することとしている。
       在留特別許可を受けた外国人の多くは,日本人等との密接な身分関係を有し,また実態として,様々な面で,我が国に将来にわたる生活の基盤を築いているような人である。より具体的な例としては,日本人と婚姻し,その婚姻の実態がある場合で,入管法以外の法令に違反していない外国人が挙げられる。
       法務大臣は,この在留特別許可の判断に当たっては,個々の事案ごとに在留を希望する理由,その外国人の家族状況,生活状況,素行その他の事情を,その外国人に対する人道的な配慮の必要性と他の不法滞在者に及ぼす影響とを含めて総合的に考慮し,基本的に,その外国人と我が国社会のつながりが深く,その外国人を退去強制することが,人道的な観点等から問題が大きいと認められる場合に在留を特別に許可している。
      (後略)

      出入国管理基本計画(第2次)
      平成十二年三月二十四日
      法務省告示第百十九号
      III 2 (2) より抜粋

      ● 出入国管理基本計画(第2次)(法務省)

    外国人登録

       居住地の市区町村にて外国人登録を申請します。
      不法滞在者でも外国人登録はできますし、また法的義務でもあります。(外国人)登録原票記載事項証明書は入管の提出書類になっていますので、入管へ出頭する前に外国人登録を済ませておきます。登録のための必要書類は、パスポートと写真で、正規滞在の場合と変わりありません。
       ただし、不法滞在の場合の外国人登録証の有効期限は1年です。更新時期が来たらきちんと切替手続をしましょう。
      なお、公務員には不法滞在外国人を通報する義務があります。外国人登録によって入管や警察へ通報されるのではないかと危惧する声も伺いますが、諸通達によって消極的に扱われており、通報を気にする必要はないと思われます。

婚姻

     日本人と不法滞在のタイ人の婚姻に関しては、日本式(先に日本側に婚姻届を提出する)に限定され、タイ式を選択することはできません。一般のケースと異なるであろう点を、以下に列挙します。

    婚姻要件具備証明書(独身証明書)の取得について

       タイ人本人がタイの郡役場で取得することはできないので、親族に代理で取得してもらうことになります。

       この際、親族が郡役場に出頭して発給される場合と発給されない場合があります。後者の場合は、在東京タイ王国大使館にて、親族など特定の者(住所・氏名・電話番号等記載)に委任する旨の委任状の作成を依頼します。この委任状を大使館から取得し、親族等の受任者に送付して郡役場にて証明書の発給を受けることになります。

    在東京タイ王国大使館発給の婚姻要件具備証明書の取得について

       婚姻当事者であるタイ人が日本に滞在している場合、日本の市/区役所が、大使館の婚姻要件具備証明書の提出を求める場合があります。この取得方法は、タイ王国大使館の下記ページをご参照ください。

      ● 日本の法律に従って婚姻手続きをする際の婚姻要件具備証明書の申請について(在東京タイ王国大使館)

       どういう文書をもって「婚姻要件具備証明書」と呼ぶか、多義的で混乱される方もあろうと思います。下記ページが在タイ日本大使館の定義する婚姻要件具備証明書です。

      WORD 婚姻要件具備証明書書式(在タイ日本大使館領事部)

      PDF 婚姻要件具備証明書書式(在タイ日本大使館領事部)

       一方、在東京タイ王国大使館は、上記ページの証明書のほか、独身の旨しか書かれていない文書を含めて「独身証明書」と呼び、タイ王国大使館発給の証明書のみ「婚姻要件具備証明書」と呼んでいる模様です。

    タイ側への婚姻報告届について

       日本側への婚姻届(創設届)後、タイ側への婚姻報告届は、在タイ日本大使館を経由する方法と在東京タイ王国大使館を経由して届け出る方法があります。

       タイ人が不法滞在の場合はタイの郡役場へ直接届出をすることができないので、後者の方法によることになります。

       この場合、「在東京タイ王国大使館発給の婚姻要件具備証明書の取得について」と同様に、在東京タイ国大使館で親族等を代理人に選任する旨の委任状を作成してもらうことになります。下記サイトをご参照ください。

      ● 日本で婚姻手続きをした後のタイ国での手続き概要について(家族身分登録手続き−婚姻の場合−)(在東京タイ王国大使館)

在留特別許可

    在留特別許可とは

       日本の入管法は、すべての不法滞在外国人を退去強制処分にする前提での立法をしているので、日本人と婚姻したタイ人も、婚姻しただけでは適法に日本に在留することはできません。在留資格取得の手続は別途行わなければなりません。

       また、不法滞在外国人の在留を特別に許可することを「在留特別許可」と呼んでいますが、入管当局は「在留特別許可申請」なる申請手続は存在せず、あくまで退去強制処分に相当すると認定した上での特別の措置である、との態度を崩していません。

    出頭

      1. 在留特別許可の手続は、不法滞在外国人が配偶者と共に地方入管局の警備部門に第1回目の出頭するところから始まります。
      2.  東京入管では、港南本局の6階調査第三部門で、水曜を除く午前9時から11時、午後1時から2時の受付となります。港南の管轄は、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県です。神奈川県は横浜支局の管轄なので、港南ではできません。

         各入管局の地図や東京以外の入管局の管轄については、下記サイトから「退去強制業務」、「警備部門」とある部署を参照してください。

        ● 入国管理局−組織・機構−(入国管理局)

      3. 最初の出頭では、国籍や居住地、配偶者など身元の確認があり、指紋の採取などの手続があります。この際、事件番号(16‐○○)を確かめておくようにしましょう。
      4. 特に最初の出頭においてですが、入国警備官から「日本にいたいと言っても入管はあなたを○○国へ帰します!」と怒鳴られるくらいのことは普通だと思ってください。それが入管の建前であり、配偶者を含めて“覚悟のほど”が試されているではないでしょうか。日本在留を希望するという強固な意思を示していただきたいと思います。入管に帰国を諭されても、いったん帰国した場合のペナルティーは入国拒否5年(2000年2月18日以降の退去強制の場合)です。5年もの間を入国拒否で待つことはできないでしょう。5年経過以前に再度来日できている事案も散見されますが、再び日本に入国できる保証はどこにもありません。

    提出書類

      提出書類一覧

         在留特別許可を希望して出頭する際には、最低限下記のような書類を提出します。

        • パスポート
        • 陳述書(入管書式。外国人本人)
        • 戸籍謄本
        • タイの婚姻証明書謄本と日本語訳
        • 住民票(配偶者の世帯全員)
        • 登録原票記載事項証明書(外国人本人)
        • 在職証明書(有職者の場合。外国人本人)
        • 住居賃貸借契約書(賃借の場合)または登記簿謄本(持ち家の場合)
        • スナップ写真 2枚
        • 証明用写真 5センチ×5センチ・5枚。外国人本人
        • 母子手帳写し(妊娠中の場合。これを所持しないか診断内容が未記入の場合は診断書)
        • 子供の出生証明書(子供がいる場合)
        • 子供の在学証明書(同上)
      添付が望ましい書類

         このほか、提出したほうがベターと思われる書類は以下のとおりです。

        • 外国人登録証(カード)
        • 陳述書(配偶者)
        • 在職証明書(配偶者)
        • 源泉徴収票など収入および納税を証する資料(配偶者)
        • 住宅地図写し
        • 親族や雇用主の嘆願書
        • 学歴証明書等(高学歴の場合に有利)
        • 健康保険証写し

    法的立場

       最初の出頭から在留特別許可まで、短くとも1年程度掛かるのが通例ですが、入管への出頭によって不法滞在状態が払拭されるわけではありません。

       第1回目の出頭の際、入管から渡される下記書面(このサイトでは テキスト化しました)をご覧ください。

       ここにあるように、入管に出頭しても、仮放免になっても、それだけで安心することはできません。まだ、在留を認められたわけではありません。

      • 働いてはいけません。働けば不法就労になります。
      • 原則として許可された地域の外に出ては行けません。許可された範囲外に出るためには、あらかじめ一時旅行許可願を申請して許可を得る必要があります
      • 不法滞在者が多いところに近寄らないようにして、なるべく警察や入管の摘発に巻き込まれないように注意しましょう(それでも警察に逮捕、あるいは起訴されることもあります)。
      •  東京都およびその周辺の警察では、「不法滞在の外国人については、他の犯罪がなければ、刑事処分を省略して身柄を直ちに入国管理局に引き渡す」という政策を実施しています。この場合には起訴されないことになります。

      • 入管に出頭した後に摘発に巻き込まれた場合を想定し、住所、氏名、日本人配偶者氏名、連絡先などを明記し、既に入管に出頭し、審理中であるという趣旨の書面、仮放免許可書、外国人登録証を常時携帯させた方が良いかもしれません(警察に効果があるかは疑問ですが、入管には提示できる内容です)。
      • 規範意識を強く持ち、法律を遵守するよう心がける必要があります。

      必ず、よくお読みください!

      在留特別許可申請という申請はありません。

      日本に不法滞在する外国人の方は、入管法(「出入国管理及び難民認定法」)という法律で、目本から出国することを前提とした退去強制手続を受けることになります。

      しかし、何らかの理由で「このまま日本で生活したい」という方は、この手続の中でその理由をあげ、引き続き日本で生活したいことを申し出ることができますが、これは「在留特別許可の申請」ではありません。

      この手続の中で最終的に法務大臣から特別に在留を認められた場合に限り、引き続き目本で生活できるようになるのです。これが認められなかった場合には、出身国などへ強制送還されることになります。

      不法滞在を入管(入国管理局)に出頭申告しても、不法滞在の状態が解消されたことにはなりません。

      退去強制手続を行い、法務大臣の最終判断が出るまでには、相当の日数がかかります。ここで注意していただきたいのは、出頭申告された方の中には「入管に不法滞在を申告(在留特別許可を申請)したので、もう大丈夫。違反状態は解消された」とお考えになる方がおられるようですが、入管に出頭申告しても、不法滞在の状態が解消されることにはならず、法務大臣から在留が認められない限り、入管法に違反している状態は変わりませんから、原則的には、働くことも認められていません。

      したがって、法務大臣の判断が出るまでは、警察に入管法違反で逮捕されることもありますし、働いている工場や会杜・お店等で、入管や警察に摘発される場合もあります。

      日本での在留を希望し出頭申告された方は、以上のことがらをよく理解した上で手続を受けて下さい。

      東京入国管理局・調査第三部門

    2回目以降の出頭など

      1. 最初の出頭後、電話での所在確認や自宅調査、不足書類の追加催促などがあります。追って数ヵ月後に警備部門から電話または書面で2回目の出頭要請があり、違反調査が行われます。その後、仮放免、違反審査、口頭審理、異議の申出と進んで在留特別許可まで最低数回の出頭を求められることになります。
      2. 2回目の出頭以降は、手続が定型化されているので、入管担当者の指示に従っていれば、さほど面倒なことにならないのが普通です。呼出しがなかなか来ないなど疑問な点があれば、事件番号(16‐○○)を告げて状況を確かめてみる必要もあります。
      3. 従前は仮放免の段階で保証金を納めていたのですが、2000年の制度改正により、職権仮放免制度が設けられました。日本人の配偶者の場合で、婚姻の信憑性の高い事案では、保証金を納めなくてよいことになりました。
      4. この間、最初の出頭から在留特別許可まで特に注意するべきなのは「絶対に嘘をつかない」ということです。夫婦関係に信憑性のある日本人の配偶者であれば、通達上、原則として在留を許可すべきことになっていますから、脅かされても怖くても決して虚偽を述べないことです。そして、入管担当者の指示には決して逆らわないことです。どうしても、決められた日時に出頭できないときは、必ず事前に連絡しておくことが必要です。要求された書面は速やかに提出すべきです。

    在留特別許可の後に取る手続

      証印

         在留特別許可がおりますと、パスポートに許可証印が押されます。日本人の配偶者等の在留資格で1年の滞在が認められ、滞在期間の更新が可能です。

      外国人登録の変更登録

         在留特別許可を受けた日から14日以内に、市区町村役場の外国人登録の窓口に出向いて、在留の資格に関する外国人登録の変更登録を行ってください。必要書類はパスポートと外国人登録証です。

      在留期間更新
      再入国許可
      健康保険の加入

        • 社会保険の場合
        •  一般に、扶養者が社会保険加入者の場合、被扶養者の在留資格の有無について審査されないため、婚姻の段階で健康保険への加入を認められているのが普通です。勤務先に戸籍謄本等を提出すれば手続できるのが一般的であると思われます。

        • 国民健康保険の場合
        •  92年厚生省通達が「国民健康保険は、在留資格上で1年以上滞在する見込みのある外国人に限定する」としているので、在留特別許可を得るまでは加入できないのが普通です。在留特別許可を得たら、外国人登録の変更登録と同時に国民健康保険の加入手続を行います。

(続)


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